成年後見人に対する報酬と相続債務
Q 被相続人である甲が認知症になり、有料老人ホームでお世話になっていました処、平成28年6月に亡くなりました。
ところで、甲には平成23年1月から相続人である甥乙が甲の成年後見人として見回り管理、財産の管理等一切面倒を見ていました。乙は家庭裁判所に対し成年後見人就任から死亡した平成28年6月までの約5年半の成年後見人としての報酬付与の申立てを行い、裁判所はその申立てを相当と認め、甲の財産より金200万円を付与する審判が平成28年9月になされました。
この場合、この200万円は被相続人の債務控除の計算が可能ですか。
A 成年後見人の報酬は家庭裁判所の審判で特に定められない場合は無償です。ところでこのたび、報酬付与を申し立てた場合、裁判所が本人の財産の状況、事務量や内容を総合的に勘案して、報酬額が決定されます。この流れからいえば、報酬は後見人の事務の節目、節目
の事務終了後に審判で決定される後追いの性格があります。
一方、相続税の控除すべき債務は、相続開始日現在に確実に存在する債務であることが要件です。
後見人の報酬付与の審判の決定が相続開始後にあった場合、相続開始日現在に確実に存在する債務に該当しないことになります。
しかし、相続開始日現在に確実に存在していなくても、後見人の報酬は無償に限られているものではないこと、及び後見人の報酬が裁判所の審判手続を経ることは制度的はものであることを鑑みれば報酬の金額が確定していない場合でも、その報酬の付与が確実になされると認められることから、相続開始後の審判による報酬付与であっても相続債務に該当するものと考えられます。
[参考]相基通達14-1
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